籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜

わたしが…十座をたぶらかす?

そんなの、絶対にありえない。


全部、茉莉花さんの勘違いだっていうのに。


ただただ、茉莉花にたたかれた頬だけがヒリヒリとして痛かった。



* * *



あれから、茉莉花さんはわたしを見かけるたび、睨みつけてくるようになった。

普段から親しく話すような仲でもなかったけど、茉莉花さんにとってはわたしなんて空気と同じ扱いだっただろうから、嫌われているわけでもなかったと思う。


…それが、まるでわたしを敵視しているような。

そんな鋭い視線が痛いくらいに突き刺さる。


“痛い”といえば、他に――。


突然、茉莉花さんに階段から突き落とされそうになったこともあった。

茉莉花さんは「ちょっとぶつかっただけ」と言っていたけど、明らかに手で押された感触はあった。