「こんなところへくるよりも、茉莉花さんのところへ行ったらどうなの。あなたのこと、待ってると思うけど」


茉莉花さんは十座の部屋へ行ったり、十座が自分の部屋へくることを楽しみにしている様子。

よく隣の部屋から、十座を待ちわびていた茉莉花さんの弾んだ声が聞こえてくる。


「なにをそんなにツンケンしているかと思ったら、お前…茉莉花に妬いてんのか?」


含み笑いをしながら、わたしに視線を向ける十座。


「なっ…。そんなわけないでしょ…!」

「そう怒るなよ。かわいい顔が台なしだぞ?」


そう言いながら、十座はわたしの顎をクイッと持ち上げる。


「は…離して!」


顔を背けて十座から逃れる。

そんなわたしをニヤニヤした表情で見下ろす十座。


「たまんねぇな、その顔。兄貴を人質に取られて、オレに歯向かいたくても歯向かえない。…ゾクゾクするぜっ」