籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜

わたしは、嫌なことなんて一切されていないのに。


「気にしないで。それに、わたしは――」

「忘れてくれ」


思いも寄らない言葉が飛んできて、わたしの胸に突き刺さる。

戸惑いながらも目を向けると、いつもの冷たいまなざしで玲がわたしを捉えていた。


わたしは、玲に頼られて求められて…うれしかった。

だから、2人だけのあの時間を忘れられるはずがないし、忘れたくもないというのに――。



『忘れてくれ』


部屋に戻ってからも、玲のあの言葉が繰り返し頭の中で再生される。


一晩中起きてはいたけれど、不思議と眠くもない。

なにかしていないと落ち着かなくて、わたしはひとまず制服に着替えた。


気分転換に外へ出よう。

そう思い、下に下りると――。


「…早くしろ!」

「なにしてる!急げ…!」