籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜

〈……え…?〉


同時に、わたしの手からスマホが滑り落ちた。



* * *



深夜の薄暗い部屋に、ぼんやりとしたモニターの光。

しんと静まり返った室内に響くのは、そのモニターから聞こえる規則的な機械音だけ。

その規則的な音とは、心拍数。


そう。

お兄ちゃんの心臓の拍動だ。


目をつむったまま動かないお兄ちゃんの頭には、ぐるぐる巻きにされた包帯。

痛々しいくらいに赤黒く腫れ上がった両頬には、大きなガーゼ。

口元には、酸素マスク。

腕には、点滴のチューブ。


そんな変わり果てた姿で、お兄ちゃんは病室のベッドの上に横たわっていた。


「お兄…ちゃん……?」


これはきっと悪い夢に違いない。

そう思いたくても、一向に覚める気配がない。


「…美鳥ちゃん」


その声に反応してゆっくりと振り返る。