「ほう、さすがは世話役。いい心構えじゃねぇか」


十座は、玲の顔のぞき込みながら横を通りすぎると玉座へと座った。

そして、そこからわたしに冷たい視線を落とす。


「美鳥!」

「はっ…、はい」

「もう一度聞くが、なぜ勝手に寮を抜け出した?」


言い方によっては取って食われるんじゃないかと思うくらいの圧に、わたしはごくりとつばを呑む。


「…よ、夜中に…病院から電話があって……」


緊張で喉がきゅっとしまったような感覚で、うまく声が出せない。


「兄が危険な状態だから…、今すぐきてほしいと…」

「なるほどな。それなら、なぜ玲に伝えなかった?もしお前が病院へ向かうとなると、世話役の玲の同行も必須だろう?」

「それはっ…」

「まさか、あわよくばそのまま逃げられるとでも思ったか?」