籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜

振り返ると、路地の遠くのほうに姿が見えた。


「あ…、あの!」


わたしが声をかけると、その人は足を止めた。


「…助けてくださって、ありがとうございました!」


ちゃんと顔を見てお礼を言いたかったけど、その人は振り返ることなく行ってしまった。


名乗ることもなく足早に去っていく。

まるで、本物のヒーローのような人だった。


『ザコが喚くな』


あのときに、男たちの間から見えたあの人の瞳――。

すべてを飲み込むような深い闇の色をしていて、一瞬見つめられたときに思わずドキッとしてしまった。


もう会うことなんてないのに。


わたしは制服を軽くはたくと、足早に路地を抜けた。


目的のスーパーまではもうすぐ。

献立はなににしようかと授業の合間に考えていて、お兄ちゃんの大好物のクリームコロッケを作ることにした。