いつもこんな感じのやり取りを繰り返している僕としては、大好きな彼女にパーフェクトに気に入ってもらえるものが贈りたいから、一緒に買いに行こうと言うのだけど、由希ちゃんによると、そんなすれ違いもプレゼントの醍醐味だと言う。
 そこで、めんどくさいと思っちゃいけない。そんな彼女もとてつもなく可愛いのだ。
 とはいえ、五里霧中で由希ちゃんの気に入るプレゼントを探すなんて無理だ。

「なにかヒントをください」

 僕は拝み倒した。
 由希ちゃんはこてんと首を倒した。ストレートボブの髪がさらりと揺れる。
 黒目がちの瞳でじっと僕を見ていた彼女は、ふいににんまりした顔になった。赤い唇が綺麗な弧を描く。
 コケティッシュな表情に見惚れてクラクラしていると、彼女は口を開いた。

「私に一番似合うもの」
「え?」
「智くんが私に一番似合うと思うものをちょうだい」

 また、漠然としたリクエストが来た。
 僕が由希ちゃんに似合わないものを選ぶはずがない。
 そういう意味ではなんでもいいとも言えるけど、それで許されるわけはない。

「それって、正解はあるのかな?」
「うん、あるよ。明確に思い浮かんだものが」

 確認してみたら、意外にも肯定された。
 僕が由希ちゃんのことを考えて迷って選んだものが欲しいのかと思ったら、ちゃんと想定しているものがあるらしい。難易度が上がった。
 由希ちゃんはアクセサリーにはあまり興味はない。カバンも今お気に入りのがあるようだ。服はさすがに自分で選ぶだろう。
 いったいなんだ?
 難題に頭を悩ませ、なんとか範囲を狭めようと、あれこれ質問をしてみたけど、由希ちゃんはそれ以上のヒントをくれなかった。
 仕方ない。
 クリスマスまで、あと一ヶ月。
 由希ちゃんに似合うものを探しまくろう。