ホウセンカ

「あの、別についていくって決めたわけではないので。ば、場所によるというか。それによっては、ここで帰ります」

 一応、毅然とした態度で言ってみる。
 すると浅尾さんは、コンビニの灰皿に煙草を捨てて私をじっと見下ろしたあと、にやりと笑った。
 
「……なんか、やらしいこと考えてない?」
「かっ、考えてないです!」

 脊髄反射のように慌てて答えると、浅尾さんが吹き出した。
 
「顔、真っ赤。かわいいな」

 これは女慣れしてる。この人は、絶対「そっち側」だ。
 かわいいなんて言われ慣れているのに、相手が浅尾さんだと心臓がうるさくなってしまう。きっと、この声と色気のせいだわ。
 
「愛茉ちゃんって、処女だろ?」
「えっ⁉」
「図星か。こういう勘は当たるんだよね、オレ」

 あ、カマかけられた。というか、普通そんなこと初対面の女の子に言う?

「安心してよ。いきなり処女に手出すほど、鬼畜ではないつもりだから。いまは、性欲より食欲を満たしたくてさ。ラーメン、食いに行こうぜ」

 ひとしきり笑ったあと、浅尾さんが言った。

 ……ちょっと待って。合コンに行って、こんなにかわいい女の子と抜け出して、行き先がラーメン屋?

 普通は、もっとオシャレなお店じゃないの? カウンターのあるバーとか……いや、お酒はまだ飲めないけど。
 それとも、都会の人ってこうなの? これがスタンダード?

 私の戸惑いを見透かすように、浅尾さんがまた意地悪な視線を向けてきた。