ホウセンカ

 この連休は、浅尾さんのことばかり考えていた。

 どうして一方的に、自分のIDを教えるだけにしたんだろう。私が連絡しなかったら、それで終わりになっちゃうのに。
 連絡が来るって自信を持っている? それとも、来なくてもいいって思っている?

 頭の中でずっとぐるぐるしていて、結局連絡はできていない。
 口説かれていたのは私のはずなのに、気づけば、こっちが追いかけるみたいになっている気がする。

 浅尾さんがなにを考えているのか、本当はどういうつもりで私を誘って連絡先を教えてきたのかが、まったく分からない。
 また今度。浅尾さんが何度も言った言葉が、ずっと頭の中に残っている。

 目を閉じると浅尾さんの顔が浮かんできて、なかなか眠れなくて。若干寝不足のまま大学へ行った。どうしてこういう日に限って、一限から授業があるんだろう。

「愛茉、おはよー」

 講義室へ入ると、七海が明るく声をかけてきた。朝から元気で羨ましいな。
 七海とは履修している授業がほぼ同じだから、大学ではいつも一緒に行動している。今日も、私たちの定位置になりつつある窓際の席をとっていてくれた。

「おはよう、七海」
「大丈夫? 顔色が悪いけど、まだ生理痛?」
 
 そうだった。生理だと嘘をついていたんだった。
 でもやっぱり後ろめたいし、あとあと面倒になるのも嫌だから、七海にはちゃんと話しておこう。
 
「今日は、ただの寝不足。あのね、本当は生理って嘘だったの。実は合コンを抜けたあと、浅尾さんと会っていて……」

 怒るかと思いきや、七海の顔がパッと明るくなった。
 
「マジで? やっぱり~! そういう気はしてたんだよね」
「ごめん、嘘ついて……」
「いいよ、いいよ。そうじゃないかなって思っていたからさぁ。あんなにかっこいい人が、なにもなく帰るわけないだろうなって。そっかぁ、やっぱり浅尾さんの狙いは、愛茉だったか」

 七海のさっぱりとした性格が羨ましい。裏表がないから、私も気楽に付き合える。ただ、言いたいことをなんでもかんでも言ってしまうところは、玉に(きず)だけど……。