ゆっくり近づいて。

神楽さんの前で止まると、あたしの頬に手が伸びてきた。


「少し熱いな。本当に大丈夫か?」

「ちょっと頭がポーッとするだけ……」


こうやって受け答え出来るからまだ大丈夫だと思う。


ドキドキするのは薬のせいなのか、神楽さんのせいなのか……正直わからない。



「羽瑠」


名前を呼ばれたかと思えば、キュッと優しくあたしの手を握る神楽さん。

その行動に胸がキュンとして。


神楽さんの瞳を見つめる。


「強くなったな」

「えっ……?」

「いつの間に立ち向かえるようになったんだよ」


その声色が優しくて涙が出そうになった。

張り詰めていたものが解ける感覚に、涙腺まで弱くなる。



「全部全部……みんなのおかげです」


瞬きをすれば一粒の涙が頬を伝って流れて行く。

それを神楽さんが優しく拭ってくれた。