「か、神楽さんっ……!」


大きな手と、大きな身体。

そんなの意識しないでって言う方が難しい。



ふわりと漂う甘い香りに、意識がどこか飛んで行ってしまいそう。



「か、神楽さんの匂い……移っちゃう、から……」

「いいよ、別に。他の奴の匂いさせるよりマシ」


ビクンと身体が反応してしまう。

そんな甘い声出さないで。


「羽瑠の匂いもどんどん甘くなってる」

「ぅ……、」


甘くなるのは、神楽さんのせいだよ……。


神楽さんだって。


どうして、どうして、どうして。

今日は……そんなに、甘いの……?


αってこんなに甘い匂いさせてるの……?



頭がポーッとし始めた時。

ガタンッとエレベーターが揺れる感覚に現実世界へと連れ戻される。



「あー……こっちも動き出したみたいだな」


そう呟いた神楽さんは、腰が抜けたあたしを抱き抱えてエレベーターから降りたんだ。