「そ、そろそろ睦美さんのお手伝いに行かなきゃ……!」


独り言のように呟いて。

だけど敦雅さんに聞こえるくらい大きな声を出した。



まだ止まない雨の中に飛び出したあたしは、数メートル進んだところで引き返す。



「ありがとうございましたっ……!」


勢いよく頭を下げ、再び外に飛び出した。

バシャッと水が跳ね返って靴を汚す。


だけど、その足取りは今朝より軽く感じた。





「律儀な奴。それじゃあ“神楽さんのことで悩んでました”って言ってるようなものじゃん」


雨の中走り去る姿を見ながら、そう呟いた敦雅さんの声は、あたしのところまで届くことはなかったんだ。