「羽瑠ちゃんの弟だって」
「田中佑輝です」
緊張してるのか、背筋を伸ばして自己紹介をする弟くん。
だけど、そんな弟くんに興味が無いのか神楽は近くの椅子をガガッと引っ張って私達の隣に座った。
ん?田中……?
羽瑠ちゃんの苗字って……そこまで思考を巡らせて、考えるのをやめた。
そう言えば再婚したって言ってたっけ。
「この人達は……?」
コソッと小声で話す弟くん。
だけど残念だね。
聞こえてるよ。たぶん神楽にも。
「あ、あたしの……新しい家族」
おお?
嬉しいな。“新しい家族”だって。
羽瑠ちゃんがちゃんと馴染んできてる証拠だ。
ニヤける顔を隠す為に、私は頬杖をついた。
「へぇ、良かった。僕、心配だったんだ。母さん、お姉ちゃんのこと捨てたって言ってたから」
「……」
しょぼんとする羽瑠ちゃんを見て、黙ってはいられなくなる。
「こらこら。羽瑠ちゃん傷負ってるんだから、えぐり返さないで」