明日に向け部屋の飾り付けを行っていると、本拠地にいるはずの幹部がボロボロになって帰ってきた。
右脚が歪な方に曲がっており、左目を失明していた。
そして俺を見るなり涙を浮かべながら声を捻り出した。
「若!親父さんと姐さんが────」
もしかしたらそうなのかもしれないと予想はしていた。
だが実際に人の口から伝えられると頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。
「────そうか」
この瞬間、俺は月詠会会長となった。
茜とお別れしてから早数年が経った。
茜の拉致事件を引き起こした組織は壊滅させた。
結局その組織の正体は月詠会の下部組織の内の1つだった。
だが、ただの下部組織が勝算もなしに歯向かうとは考えにくい。
裏で糸を引いている者がいる。
そしてこれは俺の勘だが、両親を殺した者と同一人物だと思う。
その正体を突き止めるべく、半年に一回開催される成果報告会の後の晩餐会にも参加しているが、上手くいかないし俺に媚びを売ろうとする連中が集まってきて鬱陶しい。



