茜と初めて会った時、なんて寂しそうな目をしているのだろうと思った。

 他の子たちは皆生き生きとしているのに1人だけ俯いている。

 てっきり人見知りなのかと思ったけど、それにしては彼女の周りに人がいなさすぎる。

 明らかに違和感があるのに保育士たちは何もしない。

 異質な光景だ。

 中学校の保育実習で訪れた保育園で、保育士が園児たちに俺たちの説明をしているのを聞き流しながらそんなことを考えていた。


 不意に茜が顔を上げ、ぱちりと目が合った。

 その瞬間、敵陣の中で味方を見つけたかのように目を輝かせた。

 俺を見てそんな表情を浮かべる子は今までいなかったから正直とても戸惑った。

 そして保育士が「自由にお兄さんお姉さんと遊んでみましょう!」と言った途端、茜は俺の元に駆け寄り「あーそーぼー」と抱きついてきたのだ。

 天使のような可愛らしい笑顔を浮かべながら。

 こんなに愛嬌があるのになんで一人でいたんだろう。