「茜は、俺のことが怖くないの?」



 今まで通り紅くんの家に通うようになってからしばらくして、紅くんが私に尋ねてきた。

 紅くんはたまにこういう確認をしてくる。



「うん」



 だからいつものように頷いた。



「一応ヤクザの若頭なのに?」

「うん。紅くんはやさしいもん」



 平然とした様子で聞く割には手が震えている。

 その手を包み込んで目を合わせた。



「わたしね、今までヤクザってこわい人って思ってたんだ。でもちがったんだね。紅くんもシャテーもやさしいから全然こわくないよ」



 紅くんの真黒い瞳が揺れた。

 今日の紅くんは学ランを着ているから、久々に中学校に行ったんだと思う。

 きっとそこで嫌なことがあったんだろうな。

 慰めようと、紅くんの膝上に乗り、背中をぽんぽんと叩いた。