紅くんは少し逡巡してから口を開いた。



「実は、俺は裏社会側の人間なんだ」

「・・・え?」



 告げられたことがすぐには理解しきれなくて、唖然とした。

 紅くんは私の頬に手を添えながら話を続ける。


 紅くんの家───月詠家は代々裏社会を取り仕切る家系だった。

 紅くんのお父さんが月詠会の会長で紅くんは若頭。

 ここは納めている地域のうちの一つで、本拠地は別にあるらしい。そして別居中の両親はそこに住んでいるという。

 紅くんが独りだったのは、裏組織の若頭ということで周りに恐れられていたからだった。

 屋敷の中で私を抱き上げて移動したのは紅くんが昔勝手に危険な物が置いてある部屋に入って危うく屋敷ごと吹き飛ばしそうになったから。

 そして私が連れ去られたのは、私が紅くんの家に頻繁に出入りしていたことから、とある組織が紅くんへの人質として利用しようとしたから。

 連れ去った人たちの正体はまだ不明だけど、敵組織か下克上狙いの下部組織だと推察されている。


 あまりに非現実的すぎて話のほとんどは入ってこなかった。