特に鴾のご飯が恋しい。私の中ではすっかり鴾のご飯が懐かしの味として定着していたのだ。

 ここの料理も美味しいんだけど物足りなさがあるんだよね。


 夜月を観ながら思い出すのは紅くんと過ごした日々のことばかり。

 私の人生の半分にも満たない時間が、私の心に色濃く染み込んでいる。



「紅くん・・・」



 毎回男の子が会いに行くパターン遠距離カップルってこういう感じなのかな。

 あぁでもその場合は彼女の家に泊まるか。

 そういう意味でも私たちは世間から少しズレた恋人同士なんだと思う。

 紅くんと会うときだって監視の目がついているし。

 私は未成年で紅くんは大人ってことで一線を越えないように見張りたい気持ちも分からなくもないけど、正直息苦しい。

 キスだって触れるだけのものしかできていない。しかも連続は不可。

 今まで距離が近かった分、物寂しいし心が満たされない。


 ヒトというのは本当に快楽に弱く、一度経験してしまえばそれ無しで生きていくのは難しくなるらしい。


 一度深いところまでいってしまった私にとって、今の生活では到底満足出来なかった。