正門までの道を悠々と歩いた。

 周りは抗争していたけど、私たちが巻き込まれることはなかった。

 構成員たちが盾になってくれたからだ。

 車が発進したところでふぅと安堵の息を吐いた。

 遠くなっていく時峯家本邸を見て、ようやく地に足が着いたような感覚がする。

 紅くんの肩にすりっと頬を寄せると腰を抱かれた。



「紅くん、助けに来てくれてありがとう。大好きだよ」



 本当は紅くんと再会したら「勝手に外に出てごめんなさい」って謝りたかった。

 でもそんなことはもうしない。

 私の罪悪感を軽くするために、紅くんにそれを押しつけたくないから。

 ニコッと笑うと紅くんも微笑み返してくれた。



「おかえり、茜」

「ただいま!」



 目が合うと、こつっと額をひっつけてきた。

 いつも魅入られる真黒い瞳。

 光が当たると宇宙みたいにきらきらと瞬いて、吸い込まれそうになる。