月ノ蝶、赤縄を結ぶ


 この人こそが時峯島の最高権力者である時峯藤治だ。

 そして、私の祖父。

 座布団の上で胡座をかいているだけなのに、妙な威圧感がある。

 時峯藤治の視線の先が私に移ると、僅かに目が綻んだ。



「そう畏まらんでもええ。それよりも茜、もう少しそばで顔を見せてくれんか?」



 時峯藤治に手招きされて一瞬戸惑ったら、日暮千歳に「言う通りにしろ」と目で訴えられた。



「・・・はい」



 言われた通りに近くに寄ると頭を撫でられた。

 私の体温よりも遥かに熱い手にぞわりと鳥肌が立つ。

 時峯藤治は小さな子供を愛でるような目で私を見てくる。



「えらく美人さんじゃのぉ。男どもからさぞモテたじゃろう」

「・・・よく分かりません」



 咄嗟に敬語で答えたのは、この人の機嫌を損ねないため。

 この人に嫌われてしまえば、日暮千歳の計画が泡となって消えて報復されるかもしれない。