「泣いたり喚いたりしたいのな」

「それで解決するならとっくの昔にやってるよ」



 鈴井真那が部屋から出ていった後、お腹がすいたからベルで人を呼んで食事をした。

 そして食べ終わったタイミングで再び鈴井真那が入室し「着いてこい」と言われて今に至る。

 拘束具は一切無し。

 私がここから逃げられないって分かってるんだ。

 実際にそうだし反論のしようがないけど、ちょっと悔しい。

 紅くんのお母さんならきっと、こんな状況も難なく乗り越えたんだろうな。

 鴾曰く紅くんのお父さんよりお母さんの方が権力が強かったっていうし。

 自身のに非力さが嫌になる。

 俯く私を鈴井真那が心配そうにチラチラ見ていたけど、気付かないふりをした。

 事の元凶に同情されても嬉しくない。


 無駄に豪華な廊下を歩き、一番奥に辿り着いた。

 扉にも装飾品が付いていて重そう。

 それを鈴井真那が開け部屋に通された瞬間、とある人物に釘付けになった。

 間違いない。資料に載ってきた写真と全く同じだ。