「起きたか」



 鈴木真那に無理やり車に押し込められるとき、抵抗しすぎて強制的に眠らされてしまった。

 そして目覚めた時にはベッドと簡易テーブルと椅子ぐらいしかない殺風景な部屋にいた。

 窓も時計もなく、あれからどれだけ時間が経ったのか分からない。

 当然ポケットに入れていたスマートフォンも取り上げられていた。


 情報を得るためにベッドの真横に突っ立っていた鈴木真那に問いかける。



「ここ、どこ?」

「日暮家本邸」



 今まさに紅くんたちが攻め込もうとしている本拠地の名前が出てきて体が硬直した。

 私を人質にして、日暮組に手を出せないようにする作戦か。

 鈴木真那はわずかに目を見開いた私を見て「・・・やっぱ通じるのか」とこぼした。



「鈴木真那こそ何で知ってるの?」

「俺は元々こっち側の人間だからな。何ならその名前も偽名な」



 鈴木真那も裏の人間だったということよりも、3年間呼び続けた名前が偽名だということの方が衝撃的だった。