月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 私のものだと思っていた婚約者の座が、ずっと他の人のものだったなんて考えたくない。


 でも、紅くんは私"だけ"が好きって言ってくれたから、だから・・・────。



「お嬢、大丈夫ですか」

「・・・・・・」



 私が本当に大丈夫なのか分からなくて頷けなかった。

 必死に自分を保とうとしても、不安が消えない。

 一度頭を冷やそうと、別の疑問を投げかけた。



「・・・ねぇ、天ちゃんも長春も鈴井雛菜が"いなくなった"って表現したのは何で?婚約破棄したならそう言えばよかったのに」

「あー・・・」



 また微妙な顔をされた。



「夜逃げしたとか?それとも裏社会から足を洗ったとか」

「それは違います」



 急に臙脂が喋ったからビックリした。声を聞くのは自己紹介されて以来だ。



「詳しくは、言えませんが・・・」

「・・・・・・そっか」



 目薬で脅しても尚、口を噤むってことはよっぽどの事情があるんだろう。