「そっか。天にいじめられたとかじゃないんだよね?」

「うん。天ちゃんは優しいからそんなことしないよ」



 思ったことをそのまま口にしたら、ぷはっと天ちゃんが吹き出した。

 蒼くんは「・・・天が??」と口をあんぐりと開けているし、紅くんも目を丸くしている。



 そんなにおかしなこと言ったかな・・・?

 天ちゃんは言い方はアレだけど、私を心配してくれたんだから充分優しいのに。



 2人より先に調子を取り戻した紅くんが私の前に屈んだ。



「ならいいや」



 そしてひょいっと私をお姫様抱っこした。



「紅くん・・・!?」

「疲れたんでしょ?帰ろう」

「目立ってるよ?いいの?」

「そんなの元からだよ」

「挨拶回りとかそういうのしなくて大丈夫?」

「朱雀たちに任せてるからいい」



 会話をしながらも、紅くんはスタスタと出口へと歩いていく。

 肩越しにちらっと見えた天ちゃんは「またね」と口パクしながら手を振ってくれた。

 天ちゃんのことは嫌いじゃない。

 でもさっき言われたことを思い出し複雑な気持ちを抱いた。

 こうして私の初めての晩餐会は、胸のもやもやを残す結果となった。