そんなの一度も触れられたことがない。

 紅くん関連の話で女の子の名前を聞いたのも初めてだ。



 どの時期にそんな存在がいたんだろう。

 私が小さかった頃?

 それとも離れ離れだった間?

 何で月詠会のみんなは何事もなかったかのように私を受け入れてくれたんだろう。



 言えない疑問が喉ものをグルグル回って気持ち悪い。



「そっかぁ。ま、仕方ないか。今はもういないもんね」



 いないってどういうこと・・・?



 疑問を投げかける前に紅くんが帰ってきた。



「茜」



 化粧を崩さないように優しい手つきで私の顎をクイッと上げた。



「顔色良くないけど疲れた?」



 心配そうに私を見つめている、いつもの紅くんだ。



「・・・ちょっとだけ」