月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 相当苦労してきたんだろうなという私の同情をよそに、天ちゃんはルンルンで話し始めた。



「ねぇ茜ちゃん知ってる?さっきから紅をちらちら見てる女子はみーんな愛人狙いなんだよ。婚約者だからってうかうかしてたら持っていかれるかもよ?」



 言われた方を見てみると、少なくない数の女の子たちが紅くんを盗み見ていた。

 対する紅くんはというと、蒼くんと話しているだけで彼女たちには一瞥もしていない。

 紅くんの目は普段私に向けているものとは違い、冷たさをはらんでいた。

 それは今までもそうだったし、これからもそうだと私に確信させた。



「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ」

「嫉妬とかはしないの?」



 ────紅くんはかっこいいから女の子たちが放っておかないだろう。そこで私よりも好きな子が出来たら・・・。



 天ちゃんに訊かれて思い出したのは、過去の私の懸念だった。