月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 鬱陶しがられる前に控えた方がいいよねって思った時期もあったけど、紅くんも甘える私に癒されているみたいだから遠慮しないことにした。

 今だって首元に頬ずりすると、嬉しそうにすりっと返してくれた。

 私たちはこうやって成り立っている。






 月詠家所有の中型のフェリーに乗り、時峯島にやってきた。

 てっきり一般客に紛れて移動するかと思ったのに、プライベートジェットならぬプライベートフェリーが港に止まっていたから驚いた。

 紅くんたちは平気な顔で乗っていくし。


 初めての海はどこまでも潜れそうなほど深い青色をしていた。

 太陽の光に照らされキラキラしていて、もう1つの空みたい。

 その海を切り裂き進んでいくフェリー。

 スクリュープロペラが作りだす泡は夏に浮かぶ雲のようだった。


 見るもの全てが新鮮で、子供に戻ったかのようにはしゃぐ私の手を、紅くんは離そうとしなかった。

 理由は落ちそうで心配だから。

 私がバルコニーの手すりに身体を預けたときなんて後ろから抱きついてきた。

 これは紅くんがくっつきたかっただけだと思うけどね。