『一月往ぬる二月逃げる三月去る』という言葉は本当だったらしく、あっという間に時間が過ぎていった。

 それから儚い春が散り、太陽が照りつける夏がやってきた。



「ねぇ茜」

「なあに」



 紅くんに後ろから囲われる形で座っていると、耳元で話しかけられた。

 尚、抱きしめる力は緩んでいない。

 ちょっと前に「夏だから暑くない?大丈夫?」と一応聞いてみたら「茜が暑いからクーラーの温度下げるよ」と返されたから、季節関係なく私と離れて座るつもりはないらしい。

 たまに暑くて溶けちゃいそうって思わなくはないけど、紅くんと一緒に溶けていくならそれもありかなって思ってる。

 紅くんが頭を私の肩に乗せたところで意識を現実に戻した。



「前、海に行こうって約束したじゃん」

「うん」



 水族館デートでの話だ。



「それって島にある整備されてないところでも大丈夫?」

「島・・・?」

「そう。時峯島(ときみねじま)って知ってる?」

「うん」