「バレンタインのお返し、何が欲しい?」



 リビングのソファーの上──正確にはソファーに座っている紅くんの膝の上──でまったりしていると紅くんが尋ねてきた。



 そっか。

 もうすぐホワイトデーだから。



「んー・・・」



 誕生日のときにも似たような質問されて困ったんだよね。

 だって生活に必要なものは全部紅くんが買い揃えてくれるから。

 今着ているダボッとしたパーカーもトレッキングパンツもそうだし。



「あっ、水族館に行きたい!」

「水族館?」

「うん。この前テレビで新しいところができたって言ってたの」



 実は未だに紅くんと2人で出かけたことがない。

 紅くんはしょっちゅう色んなところに仕事をしに行くし、警備面でも厳しいから、ずっとこのお屋敷で過ごしている。



「じゃあ来週末に行こっか。今週はまた出なきゃいけないから」