私が息を整えていると、髪をそっと撫でられ、誘うようなそぶりをしてくる。


 私の息が落ち着いたところでまた紅くんが顔を寄せ、私の顎をくいっと上げた。


 また、キスされちゃう・・・。


 緊張とわずかな期待を込めて目をつむった。



「茜、口開けて」

「え?」



 予想外の発言にびっくりして開いた口に、にゅるっと何かが入り込んだ。

 それは私の舌を絡めとり、口内を蹂躙していく。

 その正体が紅くんの舌だと理解するのに時間はかからなかった。

 さっき私の指にしたのと同じことをされているんだと気づき、再び熱にうかされる。



 なんだか紅くんに食べられてるみたい。

 でも、嫌じゃない。

 それもきっと、相手が紅くんだから・・・。



 それが伝わったのか、唇が離れたときに紅くんが小さく笑った。



「タバコより茜の方が依存性高いね」



 笑い方はいつもと同じなのに、目の奥は私への愛情で満ちている。



「もう茜なしじゃ生きてけないかも」



 冗談じみた言い方だけど、これは本気だ。

 紅くんの真黒い瞳に映る私は、心底幸せそうに恍惚とした表情を浮かべていた。