私は無邪気に笑いながら、奇跡みたいな人こと紅くんの手を掴んだ。



「んっとね!おにわを見ながらおかし食べたい!和がし!」

「結構渋いこと言うね」

「しぶい?」

「大人っぽいってこと」

「でしょ!」



 えへへっと笑うと紅くんは私をひょいっと抱き上げた。

 もう小学二年生だから自分で歩けるのに、紅くんは家の中を移動するときは必ず抱っこしてくる。

「なんで?」って聞いたら「危ない部屋があるから」って言われた。

 何が危ないのかはよく分からないけど、紅くんの家の広さならそんな部屋があってもおかしくないのかもしれない。

 だって紅くんのお家は日本家屋の豪邸なのだから。

 庭園に木が何本も生えているし小池もあるし、そこに金魚が泳いでいる。(かけひ)(つくばい)だってある。

 あ、竹に水が溜まってコンって石に当たるやつのことね。

 砂は波の形に整えられていて、一種のアート作品になっていた。