あなたと結婚する気はないので、安心してください。

 いつも私に優しい大地さんも、同じ気持ちだろうと、思い込んでいたから。

 大地さんが住む家の準備が整うまでの5日間、我が家に滞在することになっていた大地さんが、不自由なく過ごせるようにと。  
 私は柄にもなく張り切っていた。



「もし暇だったら、本もありますから。」

 私は、お風呂あがりに、頭の高さほどに積み上げた本を抱えて、大地さんの部屋に持っていった。
 これだけあれば、夜、時間を持て余すこともないはずだ。


「――ありがとう。」

 少し目を見開いた大地さんは、部屋の入口で、本を受け取ろうとした。
 けれど、この高さまで積み上げた本を、手渡しするのは、ちょっと無理がある。