それから3年後――。


 大地さんはご両親と離れて、一人、国内の大学に通うことになった。
 一時帰国したご両親と共に、大地さんが我が家に挨拶にやってきたのは、私が高等科に入学した、その日だった。



 久しぶりに、大地さんに会えるのが嬉しくて。私は、帰宅するやいなや、真新しい制服を着替えるよりも先に、応接室に顔を出した。


「ご無沙汰しています。」
「――優奈、久しぶり。」

 落ち着いた物腰で挨拶を返す大地さんは、3年の間に、ますます背が伸びて、大人っぽく素敵になっていた。


「まあ、優奈ちゃん。大きくなったわねえ。制服が良く似合うわ。」
「優奈ちゃんも、もう、高等科か。そろそろ正式に、婚約発表をしても良い頃だな。」


 双方の両親は、当事者の私たちそっちのけで、盛り上がっている。
 この婚約話ありきで、大地さんのご両親が不在の期間、うちの両親が大地さんの後見的な立場で関わる約束にもなっていた。


 私の通う学校では、中等科や高等科の間に、婚約の話を整えることも珍しくない。
 そのため、私は、この話が素直に嬉しかったし、疑問にも思っていなかった。