幼いころには、大地さんが読んでいる本について、話を聞かせて貰ったこともあるし、頭を撫でてもらったこともある。

 大地さんが他の子の頭を撫でるのは見たことがなかったから。私は、大地さんにとって一番仲の良い女の子だと思っていた。


 だからこそ、互いの両親が、「大きくなったら、二人を結婚させよう」と口にしていても。私はそのことに、何の不満もなかったし、むしろ嬉しく思っていた。


――けれど。


 そんな関係が続いたのは、初等科の頃までだった。

 私が中等科に進級するとき、大地さんは、家族で国外に転居してしまったのだ。