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 勢いでそうしようと決めたその日は、冬が深まり雪がちらつく寒い日だった。

 出来ればロマンチックなクリスマスには、彼と一緒に過ごしたいと思ったから。

 仕事終わりの冬馬さんと話したいことがあると近くの公園に呼びだした私は、胸がドキドキして止まらなかった。

「お疲れ様。まゆちゃん。どうしたの?」

「あのっ……私、冬馬さんのこと……好き」

 とりあえず言おうと早まった冷たい空気の中で、私の告白の声は消え入りそうだった。

 けど、ちゃんと彼には伝わったみたいだ。

「そっか。俺も好き」

 そう言って、ゆっくり私へ手を差し出した冬馬さん。私はダンスに誘われたようにして、彼の大きな手に手を重ねた。

 手は彼の口元に寄せられて、軽く指先を噛まれた。

「最高に甘い」

 にっこりと笑った顔は満足そうで、噛まれた痛みを感じる事もなかった私も、言葉の意味がわかって微笑んだ。

「私のことが……好きだから?」

 彼の好悪の感情で飲んだ血の味が変わると言っていた。だとすると、そういうことになる。嬉しい。

「……そう。けど、人として生きるには、恋人が吸血鬼なんて不便だよ。もうここで、俺のことを忘れるんだ。君の血は本当に、甘くて最高だった」

「待って! 私……」

「まゆちゃん。好きだよ……だから、ここでお別れしよう。さよなら」