迷宮階段

「正直さ、今迷ってるんだよね」
 頭をかいて、悪びれる様子もなく言う。

「迷ってる……?」
 海人の言葉に私はまた愕然としてしまう。

 なにをどう迷う必要があるっていうんだろう。そんなの全然理解できない!
「真美のことが好きで付き合ってたけど、麻衣の方が可愛いなぁと思って」

 麻衣がこれみよがしに海人と腕を組んで私を見つめる。
「できたら、真美とは別れたいんだ」

 海人の言葉に教室にいた生徒たちがざわついた。なにもこんな場所で、そんなゆるい感じで言う必要はなかった。
 私一人だけ必死になって、こんな滑稽なことってあるだろうか。悔しくて下唇を噛みしめる。


「私も海人くんいいなぁと思ったから、遊びに誘ったの。それにさ、私達友達なんだから、彼氏くらいくれたっていいじゃん?」