迷宮階段

 その光景を思い出すと胸をナイフで刺されるように苦しくなる。それなのに、麻衣は平然としてその話を聞いていた。
「そんなの当たり前じゃん。私海人と付き合ってるんだから」

 え……?私は愕然として言葉を失っていた。
 海人と付き合ってる?そんなわけないじゃん。海人の彼女は私なんだから!

 だけど目の前の麻衣は自信満々に笑みを浮かべている。
「なに言ってるの? 海人は私の……!」

 いいかけた時、教室のドアが開いて海人が登校してきた。
「はよ~」

 眠い目をこすりながら教室に入ってきた海人を、麻衣が引き止めた。
「ねぇ海人、私達付き合ってるよね?」

 媚びるような上目遣いで麻衣が聞く。
「そんなはずないよね!? だって、海人は私の彼氏なんだから!」

 別れるなんて話が出たことだって、今まで一度もない。不満なんて私達にはなかったはずだ。
 それなのに海人は困ったように私と麻衣を交互に見つめた。