迷宮階段

☆☆☆

 海人と麻衣が腕を組んで一緒にいた。その光景を思い浮かべるとカップル以外のなにものでもなかった。
 私は急いでスマホで海人に連絡を入れた。

「もしもし海人、今どこにいるの?」
 早足に廊下を歩きながら訊ねる。

 本当は学校内ではスマホ禁止だったけれど、そんなこと気にしていられない。
『今? 別に、普通に帰ってるけど』

 その声に違和感はない。
「どのへん? 一緒に帰らない?」

『あ~……えっと。実はもう学校から出てかなり経つから、無理かな』
 どこかおどおどしたような声色。それに、周囲はとても騒がしいみたいだ。

 海人の家は閑静な住宅街にあるから、そこまでにぎやかになるとは思えない。直感的に嘘をつかれているとわかってしまった。
「……そう、わかった。じゃあ、また明日ね」