迷宮階段

「わかるわけないだろ」
 そうだと思った。そもそも勉強ができるなら宿題だって忘れていない。

 私にとっては弘志とこうして長時間一緒にいることも苦痛だった。
 麻衣の人をバカにしたような笑みを思い出す。弘志と幼馴染だということだけであれだけ嫌味な笑みを浮かべてきたのだ。一緒に居残りをしたとなれば、なにを言われるかわかったものではない。

 無意識にギリギリと歯ぎしりをして嫌なことを頭の中から振り払う。
「真美の家はいいよな」

 不意に声をかけられて私は弘志へ視線を向けた。弘志はわからないなりに懸命に問題を解こうとしているみたいだ。
「なにがいいのよ」

「だって、金持ちだし、好き勝手遊べるだろ」