突然降りだした雨に中村智和は近くのスーパーに逃げ込んだ。 

店の冷房で雨で冷えた体の体温が一気に下がる。

「寒っ」

「あっ、申し訳ありません……」

すれ違った店員の小林愛実が智和が苦情を言ったと勘違いしたのか、驚きと戸惑った様子で頭を下げた。

「温度上げますね」

そう言うと愛実は近くにいた商品の補充をしている店員の中年女性に温度を上げていいか確認をしに行くと、女性店員は面倒くさそうに顔をしかめて冷たくこう言い放った。

「そんなこと気にするより早くレジに入って。お客さん増えてきたんだから」

「でもお客様が寒そうにしてますし…」

「いいのよ。生鮮物置いてるんだから、夏なのに温度なんて上げたら野菜とか痛んじゃうでしょう? それにどうせ何時間も買い物するわけじゃないんだから」

「でも…」

智和は見かねて二人の元に行く。

「あの、大丈夫です。何かすみません」

女性店員は智和を一瞥すると、

「ごめんねぇ。設定温度が決まってるのよ」と、愛実の時の態度とは裏腹に笑顔で謝った。

その態度の違いに智和は若干のイラつきを覚え、頭を下げその場を去った。

後ろを振り返ると、愛実も頭を下げ足早に持ち場に戻るようだった。

『悪いことしたな』

いつもなら気にしないが、何故か智和は愛実のことが気になり、少し距離を置いて愛実の後をついて歩いた。

『年は俺と同じくらいか? てことはバイトかぁ』

愛実が小走りに走る姿がおかしくて智和は顔をほころばせた。

『なんか、ちっちゃい動物みたいだな』


 一人のおじいさんが愛実に話しかける。
 
 愛実はレジの方を気にしながらも、おじいさんの話を聞くため足を止めた。

 智和は商品を選ぶふりをしながら二人の会話に耳を傾ける。

 どうやら商品の場所を聞いているようだった。