ワンワン！！

　突如野犬が吠える音が聞える。しかもこれは近い。

「！」
「皆、逃げましょう！！」

　野犬の群れが私達を追ってくる！野犬に噛まれれば死だってあり得る。私達は街の方へと走って逃げる。

「街が見えて来たぞい！」

　アパルトマンが立ち並ぶ街並みがすぐそこまで来ている。到着し、物陰に隠れて様子を伺う。

「おいっ野良犬がこっち来るな！」

　野犬は街の人達に追い払われ、郊外へとちりぢりになって消えていった。私達はふーっと大きく肩で何度も息をする。

「ナターシャ、大丈夫か」
「ええ、リークは？」
「何ともない。大丈夫だ」

　メイルとマッシュも無傷のようだ。だが、老体に鞭打って走ったマッシュの息はとぎれとぎれになっている。

「どこかで休みましょう」

　メイルにそう言われて、休めそうな街並みを歩くとパブらしき店が立ち並ぶ箇所に到着した。

「お酒は…やめときましょう」

　メイルの判断によって、パブに入るのはやめになった。その後石畳の道を歩くと、木造りの古いベンチが置いてあったのでそこに座って休む事にした。

「はあーっ…ようやく休めるわい…」

　ベンチの右前方には、ホテルがある。明かりがついておりフロント付近には人が2人くらいいるのも見えた。

「あの、今日はあのホテルに泊まりませんか？」

　私はそう提案を投げかけてみる。暗い中家を設置するよりも、明るくなってからの方が周りも見えて安全だろうと考えたからだ。

「確かにナターシャの言う通り、明るくなってからの方が良いわね。お金が足りるならあそこで泊まりましょうか」
「リークはどう？」
「ナターシャの言う通りだな」
「わしも同意見じゃ。野犬に襲われるのはもうごめんじゃ…」

　マッシュのへとへと具合を見れば、ここは泊まって英気を養って空の方が良いだろう。
　ホテルに入ると、20代半ばくらいの白い服を着た若い女性の受付嬢が、親切に私達が泊まる部屋まで案内してくれた。料金も思ったより安く、しかも朝食までついてくるそうだ。
　ちなみに部屋はマッシュとメイル、私とリークの2部屋となる。

（これはありがたい…）