私はゆっくりと玄関の扉を開き、リークと共にウサギへと近づいた。

「ウサギさん…?」

 と、声をかけてみるが、ウサギは座ったまま微動だにしない。

「リーク、どうしましょう」
「とりあえず様子を見よう…!」

 すると、ウサギが座っている位置が青白く光り出した。それに伴いウサギの目も青白く光る。

「!」
「ナターシャ、離れるんだ…!」

 リークがそう叫んで、私を家の中へと押し込むのと、青白い光が爆発するのはほぼ同時の事だった。

「…」

 それから1分ほど経っただろうか。私が玄関で目を覚ますと、リークが私の上に覆いかぶさるようにして倒れていた。リークは苦しそうにうめき声を出している。

「っ…」
「リーク!!」
「ナターシャ…」

 するとリークの左隣にはあのウサギもいた。自分がやらかしたという自覚があるのか、涙を流しながら心配そうにリークを見つめている。
 そんなウサギを見つけたリークは、よろよろと立ち上がる。

「リーク、いきなり立ち上がるのは…!」
「これくらい、休めば大丈夫だ…」

 リークは強がってはいるが、額からは血が流れている。

「リーク、そのまま待ってて…!」
 
 私は急いでリビングの近くにあったタオルを取って、水でぬらすと、リークの額から垂れてくる血を拭う。

「薬草…薬草も持って来なくちゃ…!」

 すると、ウサギが震える左前足をリークの額に当てた。すると徐々にリークの額から流れる血が止まっていく。

「え…」
「ナターシャ…このウサギ、魔法が使えるのか…?」

 確かにこれまでも光を放っていたりしていた。今の回復魔術を含めて何かしら魔法が使えるのは確実だ。

「…メイルさんに聞いてみようか」

 とリークは呟く。

「でも、リーク…今は動かないほうが」
「このウサギのおかげか、痛みは大分楽になった…」
「そうなの?!」
「だから、水鏡を使えば移動は十分出来る」

 リークは先程とは違うしなやかな動きを見せる。そんなリークをウサギが見上げている。