☆椿side☆


 「返されちゃったな……」


 ブラックの缶コーヒーを見つめ、涙声をこぼす私。


 「政略結婚でもいいから……ずっと朝都のそばにいたかったのに……」


 生徒だらけの屋上で泣きたくない。


 そう強く思っているはずなのに、込みあげてくる悲しみで涙腺が緩んでしまう。




 幼稚園のころから、私は朝都のことが大好きだった。



 彼はまるで、生まれながらの魔王様。

 自信過剰で、口が悪くて、ワイルドで。

 自分が正しいと思えば、大人にも歯向かう幼稚園児だった朝都。

 眼圧鋭いキリっとした顔がかっこよくて、男子からも女子からも好かれていた。



 それに対し5歳の時の私はというと……

 『ブクブクのずんぐりむっくり』

 って言えば、想像できるかな?



 今は標準体重より軽めだよ。

 でもあの頃は、かなり甘やかされていてですね……

 お父さんの会社の従業員が私をかわいがりすぎたのが、体重超過の原因だと思うんだけど……