「最近ね私のお父さんが悩んでたんだって。私のお兄ちゃんに自分の会社を継いでもらおうと思ってたけど、デザイナーの夢を諦めさせるのはかわいそうだって。昨日の夜、その悩みを電話で昼夜さんに話したら、私との結婚を提案してくれたみたいなの」
……兄貴。
俺にどんな恨みがあるんだよ!
そりゃ、兄貴の前で何回も叫んできたよ。
すっげーイライラ顔で、家の壁をボコボコぶん殴りながら。
『椿と結婚なんて無理!』
『今どき政略結婚させる親がどこにいるんだよ!』
『俺の未来を勝手に決めんな!』
って。
だけどさ……
兄貴だって元総長だったんだからさ、見栄を張りまくりたい俺の気持ちをわかれよ。
ガキの頃から一緒に育ってきた兄弟なんだ。
俺の心の中に、すっげ―やっかいな恋の天邪鬼が住み着いていること。
ズバッと見抜いてくれてもいいんじゃねーの?



