俺とは違う。
他人のために尽くせるタイプなんだよな。
他人の悩みに熱心に向き合いすぎて、自分のことを後回しにするところは心配だけど。
俺は今日、初日の出に願おうと思っているんだ。
『椿を支えてあげられる、唯一の男になれますように』と。
親同士が決めた政略結婚も、3か月後に迫っている。
今この瞬間が、告白のチャンスなのかもしれない。
缶コーヒーのお礼を椿に伝えて。
自分の恋心も一緒に添えるんだ。
「つっ椿……あのさ……」
「あっ! 朝都、見てみて。初日の出が顔を出しそう」
は?
このタイミングで?
「ちゃんと目をつぶって手を合わせなきゃ。朝都もお願い事、早く早く」
は~あぁぁ~。
初日の出さんさぁ、俺にうらみでもある?
やっとの思いで決めた俺の覚悟を踏みにじるとか、それっていかがなものよ?
せっかくの縁起物だし、椿の唯一の男になれるように必死に願っておくけどさ。



