土日を挟んで月曜日。

今まで、ずっと幼馴染だと思っていたはずの優太からら告白されて数日。

___お断りして、数日。



登校も優太とは会うことはなかったし、休み時間にも会うことはなかった。



会ったらどうしよう、声をかけるべきなのかな。挨拶くらいしなきゃいけないかな。


そんなことを悶々と考えているうちにどんどん時間は過ぎるもので。




とっくに六限目となっていた。




ずっと上の空、と言った感じで全く授業内容も頭に入ってこないし……。挙げ句の果てには、そんな私を見た詩織が「大丈夫?」だなんて心配しだす始末。



ダメだよね……。もうすぐ受験だっていうのに。



こんなままじゃ、ずっと勉強に集中できずに受験に挑んでしまうことになるんだから。


___それに、優太も……ああ言ってくれたから……。









「ごめんなさい」


そう謝ると、優太はいつものようにへらっと笑った。


「わかってたっつーの」


そんな優太を見るのがどこか辛くて、目を逸らしてしまった私に優太は優しく声をかけてくれた。




「受験前に、ごめんな。……すっきりした」



本当だろうか。



「あ、あの……」


「んだよ」


「い、いつから……?」



ずっと気になっていたことを聞くと、優太は困ったように笑った。





「まー、十年くらい前から」


「えっ」





じゅ、十年……!?


十年前って、私たちまだ小学生の時……!?
そんなに長く思ってくれていたのに、私はそれに気づかなくて……。

それに、優太の目の前で流くんの話をしたりして……。


優太は、どんな気持ちになっただろう。



考えれば考えるほど、頭の中が混乱してきて、目に涙がたまる。


今にも涙が溢れ出しそうにしている私に、優太はデコピンをした。




「泣くな、泣き虫。振ってくれてサンキューな」



どうしてこんな時でも、自分のことなんて気にせずに私に感謝をするの……?



「俺も……今はお前が、大事な幼馴染だよ」



優しく私を見つめた後、優太は惜しむような素振りはせず、立ち上がって私に背を向けた。






「じゃーな、また月曜日」






そう言って、優太は教室を後にした___。



















優太は「サンキュー」なんて言ってくれた。酷いこと、たくさんしたのに。


優太は、いつでも上か前を見ている。


常に進もうとしている。




___だから、私だって今目の前にある"受験"に集中しなくちゃ。



少しだけ、前を向けた気がした。



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「おーおー、ダメだったかー」


「……るっせー」


教室に入ってくるなり、机に突っ伏す俺の横に、ことんと置かれた紙パックジュース。



「頑張ったよ、お前は」


「何様だよ」


「玲弥様だよ」


「馬鹿かよ」




こんなテンポのいい会話を繰り広げられるのは、友達のコイツ___降谷玲弥だけだと思う。


なんだかんだ一緒にいてくれるやつ、なんだよな。




「中学から一緒だったけど、お前が泣いてるとこ初めて見た」


「いちいち口にするもんじゃねぇよ」


「ははっ、ごめん」



明るい笑顔が俺に向けられる。でもそれは、決して皮肉を込めたものではなくて。



「さ、帰るぞ。先生に見つかったら怒られちまう。今日は俺の奢りでラーメンだ」



いざという時の俺の居場所だ、そう教えてくれるような、そんな笑顔だから。





「アイスも奢れよ」


「こら、ケチはつけない。またいつでも奢ってやるさ」





コイツと一緒にいるのも、悪くねーな。

そんなことを思いながらも、俺は玲弥の背中にバシンとスクールバッグを命中させた。






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