恋神様に願いを込めて

「ありがとう」のたった一言が、どんなに嬉しいことなのか私は知った。


全く恋愛に興味がなかったくせに恋愛の神様なんて呼ばれて、それでもこの役は好きだった。


私のつまらなくて狭かった世界が広がって楽しかった。



「…ごめんね、丈夫な体に産んであげられなくて…。恋の人生はこれからなのにね…っ」


「そんな…泣かないでお母さん」



顔を覆って泣き崩れてしまったお母さんに慌てて駆け寄る。


お母さんは何も悪くない。誰も悪い人なんていない。



ただ、もしもこの世に神様がいるなら、どうして私が死なないといけないのか教えてよ。


どうしてこんな運命を生きなきゃいけないのか教えてよ…。



その日、私は初めて死にたくないと思った。





「恋、朝の分の薬飲むの忘れてるわ」



家を出ようとする寸前でお母さんが駆け寄ってきて薬と水のペットボトルを渡してくれた。



「あ、ありがとう。もう時間ないし、行きながら飲むわね」


「うん。いってらっしゃい」



薬の袋をブレザーのポケットに入れて、家を出る。


時間というものは残酷にも流れていき、あっという間に終業式の日がやってきた。