恋神様に願いを込めて

「恋愛の神様、って生徒から呼ばれているんですって?」



思わず持っていた箸を落としてしまい、慌てて拾う。



「先生から教えてもらったわ。あなたが生徒から慕われているって。でもまさか、恋愛ごっこをしていたなんてね」



なんて言おうか必死に働かせていた思考が停止する。



「…恋愛ごっこ?」


「最近帰りが遅かったのはそのせいなのね。はあ…。そんなごっこ遊びをしているくらいなら早く帰ってき…」


「…違うわ。ごっこ遊びなんかじゃない。たしかに最初は流されて始めたことだし、恋愛なんて全くわかりもしないのに他人の恋愛相談を聞いて、自分でも馬鹿げていると思った。…だけど、たくさんの人の話を聞いているうちに、私でも力になれることがあるって知った。誰かの役に立てることが嬉しくて、一生懸命に恋をする人たちの背中を押してあげたいと思ったわ。私はちゃんと本気よ」



お母さんは驚いたように目を見開いてから、ふぅと小さくため息をついた。


なんて言われるかわからなくて怖い。もしかしたら終業式を待たずに学校をやめさせられるかもしれない。



それでも、私は真剣だから。ごっこ遊びだなんて言ってほしくなかった。



「…ごめんなさい。違うの、こういうことが言いたいんじゃないわ。ダメね、勝手に決めつけて恋の気持ちも考えもしないで」


「…え?」



まさか謝られるなんて思ってもいなかったから、驚いて目を丸くする。



「勉強や習い事はもちろん、恋はたくさんのことを今まで頑張ってきたわね。でもそれは全部、どこか機械的だった。周りの期待に応えるように頑張り続ける恋がずっと心配だった。…だけど、やっと自分の意思で一生懸命やりたいことを見つけられたのね。今日、教室の外からだったけど恋が生徒と話しているところを見たわ。とても嬉しそうに笑っていた」