恋神様に願いを込めて

佐野くんと出会ってから、毎日が少し変わった。



今までは生きることなんてとっくに諦めて、だけど死ぬのをただ待つのは嫌で意味もなく学校に通っていた。


孤独だったからこそ、人との繋がりを求めていたのかもしれない。


だけど今は、佐野くんといる時だけは、心から笑える。ちゃんと感情を出すことができる。



いつからか、佐野くんと過ごすこの時間が楽しみになっていた。



「先輩は恋愛がわからないって言っていたけど、そんなことないですよ。きっとわかる日が来るはずです。だって先輩の名前は(れん)だから。永野恋。名前に“恋”が入っているんだから、恋愛と無縁なはずがない」


「…ふふっ、何よその理屈」



–––––「気づいたら、恋に変わっているものなんですよ」



今なら佐野くんの言っていた意味がわかる気がした。





「今日、学校に行ったわよ」



お母さんと二人きりで夕飯を食べている時だった。唐突にお母さんがそう言ったのは。



「もうすぐ二学期が終わるし、退学の手続きをしに行ったの。担任の先生、とても悲しんでいたわよ」


「…そう」



いつ来ていたんだろう。全然知らなかった。



あの後、佐野くんと校舎裏で過ごしてからは二人の女子生徒の恋愛相談を聞いて帰った。


また帰りが遅くなってしまったけど、お母さんが何かを言ってくることはなかった。