恋神様に願いを込めて

「…え?あれ見ていたの?」


「はい。周りの人は見て見ぬフリをしていたのに先輩は真っ直ぐに新入生の子を助けにいってあげていて、強くてかっこいい人だなって思ったんです。それからも、なんでもできる完璧な永野先輩の噂はよく耳にしました。最初はすごいなって興味を持っている程度だったけど、ある日廊下で先輩とすれ違った時、なんだか泣きそうな苦しそうなそんな顔をしていて。その時、僕はやっと本当の永野先輩を見た気がしました」



お父さんが社長だった私は、娘として恥をかかないようにと、たくさんの習い事をして勉強も人一倍やった。


心臓が弱くて運動や外で遊ぶことがあまりできなかった分、他にできることはなんでも頑張った。



頑張れば頑張るほど上を目指すようになり、完璧になろうと努力をしてきた。


そうすることで得られたものは、優秀な成績や周囲からの期待、そして“孤独”だった。



「僕は中学の時、誇れるものが勉強だけでした。この見た目通り、とことん真面目な中学生活を送りました。周りの期待に応えるようにいい人をずっと演じ続けてきた」



周りの期待や私のイメージを壊したくなくて、その通りに自分を作ってきた。


たった一つ違うとしたら、恋愛をしなかったこと。


病気がわかって、余命宣告までされて恋愛は私に必要ないと思ったからだ。したいとも思わなかった。



「生徒会長に立候補したのも、そんな感じの理由です。だから先輩もすぐに僕と同じだとわかりました」


「…そうね。そんなこと見破られたの、佐野くんだけだわ。恋愛をしたことがないって知られたのも、佐野くんだけ」



でも今なら思う。知られたのが、佐野くんでよかったって。



「ずっと自分を作り続けて苦しかったけど、最近は違います。素を出せる人ができたから」